
皆様、こんにちは。
マレーシアを訪れた方なら、一度は目にしたことがあるはずの「Batik(バティック)」。カラフルで南国らしさがあふれるバティックの布地はお土産の定番でもあり、マレーシアの伝統工芸の代表格です。


マレーシア全土で販売されているバティックですが、特にマレー半島の東部に位置するTerengganu州(トレンガヌ州)とKelantan州(クランタン州)は古くからの名産地として知られています。
今回は、そのなかでも「トレンガヌ バティック」に注目。伝統工芸としての魅力をご紹介します。

実際にKL(クアラ ルンプール)でそのトレンガヌ バティックを購入できるおすすめショップについては、こちらの記事で紹介していますので、ぜひあわせてご覧いただければ嬉しいです。
- 【マレーシアの伝統工芸Batik/バティックとは】
- 【バティックの種類と素材】
- 【トレンガヌ バティックの定義と特徴】
- 【トレンガヌ バティックを日常に取り入れる】
- 【ハンドメイド バティック購入時の注意点】
- 【トレンガヌ バティック生地などが買える場所】
- 【最後に】
【マレーシアの伝統工芸Batik/バティックとは】
「ろうけつ染め」の技法で作られる布地バティック。

現在の南アジアから東南アジア、そして東アジアとまとめられているエリアでは、製法やデザインなどは少しずつ異なりながらも17世紀以前からその製造が確認されています。
17世紀頃からは現在のインドネシアのエリアでその技法が徐々に成熟。1910年頃には現在のマレー半島クランタン州とトレンガヌ州のエリアに伝わり、マレー半島全体にも広がっていったと言われています。

バティックは溶かしたろうで布に線を描くことで模様ごとに染料を着けることができ、その色が定着後にろうを落として柄を浮かび上がらせます。その工程を繰り返すことで、多彩な色や模様、そして布一枚ごとに異なる美しい表情が生み出されるその技法は、古くから現代にいたるまで代々職人たちが受け継いできたもの。
マレーシアのバティック専門店やお土産店などには、一点ものの高級バティックから手軽に購入ができる量産品、いわゆるプリントのバティック風生地まで幅広く並びます。




遠くからでも鮮やかさが浮かびあがるようなカラーや柄のデザインも特徴的。


花や動植物をはじめとしたさまざまなモチーフがデザインに採用されているほか、南国とイスラム文化が融合した独特のデザインの幾何学模様も豊富なことが特徴です。
【バティックの種類と素材】
ご存じの方も多いでしょうが、「バティック」と呼ばれる生地は基本的に下記の二種類が市場に多く出ています。
・機械によるプリントバティック(=バティック風生地)
今回メインでご紹介するトレンガヌ バティックは主に前者のハンドメイド バティックです。両者の違いも含めて、もう少し詳しく記載します。
▶ハンドメイド バティックの手法
ハンドメイドは大きく分けて二種類。どちらも一つひとつ手作業で一点もののため手間がかかり、中~高価格帯のものが主流。
【1】手描き/ペン状の道具で布にろうを描き、筆で色を差して仕上げる。繊細で一点もの。


【2】ブロック プリンティング/銅製や木でできたスタンプのようなブロック型でろうを布に押し付け、柄や模様をつけていくもの。繰り返し同じ模様をつける規則的なパターンが特徴。



▶ハンドメイド バティックの素材
ハンドメイドの場合の素材は、下記のものが多く流通しています。
| 生地の種類 | 特徴 |
|---|---|
| シルク | 最上級の素材のため高価。光沢感がありフォーマルに向く。 |
| シルク混コットン | コットンが入ることで光沢感が薄れカジュアルなデザインにも汎用できる。 |
| コットン ビスコース | レーヨンのような柔らかさのあるビスコースが入ることで、生地に落ち感が出るため、洋服を仕立てる際は女性らしいシルエットが出せる。 |
| コットン | 主にカジュアルなデザインに大活躍で、お手入れが楽。 |
▶機械プリントによるバティック風の生地
機械で柄や模様が印刷された布。大量生産向けで比較的低価格が主流。正確に言えばバティックとは呼ばず「バティック風生地」ですが、実際は市場ではバティックと総称されてお店に並んでいます。

▶機械プリント生地の素材
プリントのバティック風生地で最も多い素材はナイロンやコットンですが、レーヨンやシルク混の各種生地も出回っています。
とはいえ、製作段階のコストを抑えることで安価に販売することが目的のプリント製造ですので、やはり生地も低コストが実現できる安価な原料でのナイロンや安価なコットンのものが主流です。
【トレンガヌ バティックの定義と特徴】
マレーシアのバティック界をけん引するトレンガヌ州には大小さまざまな工房が点在し、日々質の良いトレンガヌ バティックが作り出されています。
何をもってトレンガヌ バティックと呼ぶのか?ですが、広義では「トレンガヌ州の工房で制作・製造されたバティック」のことを指します。
「○○の柄/模様/カラー/生地=100%トレンガヌ バティック」というはっきりとした定義はないのですが、とはいえ、柄や模様などトレンガヌ州で作り出されることが多いバティックの特徴もいくつか挙げられます。
自然のなかにある南国の草花や生きもの、イスラム文化の影響を受けた幾何学模様そして日用品にいたるまで、あらゆるものがデザインに取り込まれています。そのすべてをご紹介することは難しいのですが、特によく目にするものを筆頭にいくつかご紹介します。
マレーシア人であればトレンガヌといえばこの柄、と分かる代表的な模様が描かれているもの。




Baju Kurung(バジュ クルン)などの民族衣装に仕立てられることも多い、南国らしい花柄模様も定番。



シンプルに自然のモチーフを描いているものも。


先述のとおり、いずれもトレンガヌ州のみで作られているデザインというわけではなく、クランタン州をはじめとしたほかの地域でも同じようなデザインや柄は存在するものの、特に多くこのエリアのバティックとして見ることができる、というものです。
【トレンガヌ バティックを日常に取り入れる】
トレンガヌ バティックは単体の布のみならず、日常に使えるものとして仕立てるなどの活用法もおすすめです。
▶洋服や小物などファッションアイテム
民族衣装などは着る機会も含めてハードルが上がりますが、たとえばワンピースやシャツ、子供服、帽子やバッグなどに仕立てられたものも多く売られています。






お店がバティックのブランドとコラボをしてトートバッグを販売していることも。


コットンやコットン ビスコースは着心地もよく、南国での衣服としてとても活躍します。また、伝統工芸品という点からも結婚式や会食などに着て行っても映えるのが嬉しいところ。


生地を購入して家族おそろいで仕立ててみるのも、マレーシアの旅や暮らしの記念になり楽しそうです。
▶インテリアアイテム
生地をそのまま使用するなら、たとえばテーブルクロスや棚の目かくし用などにもおすすめ。
また、お店ではクッションカバーやテーブルランナー、安価なものではコースター、キッチンアイテムなども多く売られています。


ご紹介した洋服やインテリアアイテムはいずれもギフトとしても最適。マレーシアのお土産としても喜ばれそうです。
【ハンドメイド バティック購入時の注意点】
初めてトレンガヌ バティックを買うという場合に(もちろんほかのバティックも)、特に気にしておくと良いポイントを挙げておきます。
▶ハンドメイドかプリントかを確認
慣れていないと見た目での判断は難しいですが、何よりまず明らかに値段が違います。当然ですが手描きやブロックプリントは手間がかかるため比較的価格が上がり、生地がシルクなどで一点ものにもなるとかなり高価になります。

判断が難しいのは微妙なラインの中価格帯のものですが、近年はプリント技術が上がっていることもありマレーシア人でもその区別ができない方も多いとか。当然ながら外国人の初心者には判断が難しいため、迷った際はスタッフに「ハンドメイドですか?」と確認をすると良いでしょう。
▶生地の素材をチェック
コットンは使う際も手入れも扱いやすく普段使いに向いています。一方で高級感あふれるシルクは、晴れの日の一着など仕立て映えはしますが非常にデリケート。
触ってみると質感の違いが分かりますので、いろいろチェックしてみましょう。用途に合わせて求める素材は変わりますので、用途に適している触り心地か?を意識しながら探してみると良いです。
▶色落ちや染めむらを確認
ひとつとして同じものは生まれないのがハンドメイド品の良さ。同じ柄でも一枚の布のなかで色の違いが生まれたり、職人の方のクセや染料の濃淡など表情が大きく変わります。模様や色の微妙な違いや多少の色むらもハンドメイド品の魅力のひとつですが、柄や色合いなど細かい点を気にする方は広げてしっかりとチェックをすることをおすすめします。

また、バティックの模様や柄は遠目でみるのと近くでしっかり見るのとでは印象が変わります。お店の外から見て「好みと違うな」と通り過ぎてしまって、運命の出会いを逃していることもありますので、その点も気にかけておくと良いでしょう。
▶用途に適した量の生地を探す
生地を購入の場合ですが、漠然とでもいいので「何かに仕立てる」のか、「生地そのままをインテリアとして使う(テーブルクロスなど)」のかをイメージしながら選ぶと、必要なメートル数に足りなかった/多すぎた、という失敗が少なくなります。
生地だから好きな量を買えばいいのでは?と思っている方も多いのですが、そうはいかない現実も。実はマレーシアで購入できるバティックの生地サイズの種類は以下のとおり、大きく3つのタイプに分けられます。
※縦の長さはどれも1~1.1メートル程度が主流
※「主な用途」はあくまで一例。サロンタイプの生地をテーブルクロスや棚の目かくしに使うなど、一枚布もサロン生地も何に使っても問題はありません。
【1】2メートルもしくは4メートルの完成品生地をカットせず販売するもの
主な用途:シャツやサロン(スカートタイプの伝統的なマレー系の腰巻きスタイル)(要2メートル)やバジュ クルン(要4メートル)などの仕立て


【2】1メートル単位でカット販売が可能なもの(ただし、生地の特性上最大4メートルまで)
主な用途:自分の好みで小物でも洋服でも

【3】Sarung(サロン)と呼ばれる、2メートル程度の一枚の生地が筒状に縫われているもの
主な用途:サロン(スカートタイプの伝統的なマレー系の腰巻きスタイル)


このサロンタイプ、マレーシアの女性たちは日常的にこのように巻きスカートとして使用しています。

どうしてもその生地が良い、ほどいて一枚布として使いたい!という場合はそれも可能ですが、しっかりと筒状に縫われていますので、その縫製部分をほどくひと手間(以上かも)がかかります。

この3つのタイプがあることを意識して生地を選ぶと、いざ買ってから「足りない!or 想像してた形状と違う!」ということを避けられるでしょう。
余談ですが、どうしてもバティックの雰囲気がある生地で4メートル以上を購入したい場合。上記のとおりハンドメイドのバティック生地ではそれはほぼ叶いませんが、町中にある生地屋さんでぐるぐると巻かれたタイプのものからバティックの雰囲気がプリントされたものを探せば、それも可能です。

▶購入後のお洗濯について
バティック商品を購入後、お洗濯数回は色落ちとともにほんの少しですが素材が収縮する場合もあります。特に初回はかなり色落ちをした濃い水が出ますので、手洗いをする際もビニール手袋をすると手荒れも防げます。
購入から数回は手洗いで短時間脱水。色落ちが完全に止まった後はコットンのみの素材であれば洗濯機でのお洗濯に切り替えても、収縮の点でも問題はありません。ただし、シルク混コットン素材の場合は弱水量やデリケートモードでのお洗濯、シルクであればクリーニングが安全です。
この点も購入時にスタッフさんに確認をすると教えてくれますので、ぜひ聞いておくと良いでしょう。
【トレンガヌ バティック生地などが買える場所】
時間もたくさんあり、そして多くの商品のなかから選びたい!という場合はトレンガヌ州まで足を運び、Kuala Terengganu(クアラ トレンガヌ)にいくつかあるバティック生地や仕立て品を多く取りそろえる大型店に行くのが一番ですが、なかなか難しいという方がほとんどでしょう。
限られた時間のなかでも良質なトレンガヌ バティックの生地や仕立て品を探したい、という方はKL(クアラ ルンプール)でもすてきな一枚に出会うことができます。
▶KL(クアラ ルンプール)のお店
こちらの記事内で紹介している二つのお店はどちらもKL(クアラ ルンプール)の中心にあり、立ち寄りやすい立地、そして比較的購入しやすい価格からの品ぞろえも豊富です。個人的にとてもおすすめしたい二店をご紹介するとともに、実際にお店で購入する際に押さえておくと良いポイントも紹介しています。興味がある方はぜひ記事をチェックしてみてください。
また、こちらのお店「antakesuma」でもトレンガヌ バティックをはじめ、バティックおよびバティック風生地を使用した小物を多く取りそろえています。KLの中心地にあるためアクセスも容易ですのでぜひ参考にしてみてください。
▶KLでトレンガヌ バティックが集まるイベントで探す
不定期の開催にはなりますが、マレーシアの伝統工芸品を一挙に集めるイベントも開催されています。2024年までは毎年開催されていたイベント「HKK(Hari Kraf Kebangsaan/National Craft Day)」はその最たるものですが、諸事情で2025年からは不定期かつテーマを少し変えた開催に変わっていたりもします。
不定期で開催されるイベントは規模が縮小サイズのことが多いですが、逆に広すぎなくて見やすい(笑)、そして初心者さんが見て回るには十分なサイズ&商品量です。イベントのお知らせは、KLの中心地にあるクラフトセンター「Kompleks Kraf KL」のIGにて随時発信されますので、気になる方はチェックしてみてください。
https://www.instagram.com/komplekskrafkl/
開催イベントの多くは上記の「ASEAN Arts & Crafts Bazaar 2025(AACB)」のような感じ、もしくは「HKK(Hari Kraf Kebangsaan/National Craft Day)」の縮小版という感じが多いので、ざっくりでも様子やどんなアイテム&ショップが出展しているのかを知りたい方は、ぜひこちらの過去開催レポート記事をのぞいてみてください。
【最後に】
マレーシアの伝統工芸の代表格、トレンガヌ バティックについてご紹介しました。今回は主に、バティックの基本的な知識や特徴を中心にお伝えしましたが、もし機会があればぜひお店などで実際にその布に触れてみてください。
記事内でもさまざまなトレンガヌ バティックの生地や商品写真をご紹介しましたが、模様一つひとつに南国マレーシアらしい魅力があり、色合い、質感、そして手触り、そのどれもが写真だけでは伝えきれない温もりを持っています。知識がなくても、実際に手に取ってみることでトレンガヌ バティックの魅力がより身近に感じられるはずです。
今回の記事が、マレーシアの旅の思い出や暮らしの彩りの一部としてお役に立てば嬉しく思います。