
皆様、こんにちは。
「亡くなった翌日にはもう埋葬が終わっている」
マレーシアでイスラム教の葬送に触れると、そのスピードに驚きます。夫と結婚をしてから何度か親族の訃報に接する経験をしていますが、いずれも深夜に「亡くなった」という知らせを聞き、その翌朝には葬儀の礼拝のために集まって昼には土葬まで終わっている、という流れでした。
葬儀も埋葬も、大きな演出や長い儀式もなくすべてが驚くほどシンプルに進んでいくイスラム教の葬送。なぜこれほど早く葬儀が行われるのか。なぜ土葬なのか。そこには、イスラム教の死生観や考え方、そして助け合いの精神も大きく影響しています。
今回の記事では、日本の葬儀とは大きく異なるマレーシアのイスラム葬儀について、その背景にある意味や事情なども合わせて解説します。
また、日本人なら気になる非イスラム教徒が弔いに関わる際のマナーについても紹介しますので、気になる方はぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです。
- 【イスラム教の死生観】
- 【マレーシアのイスラム葬送とは】
- 【とにかく早い|亡くなってから埋葬までの流れ】
- 【死亡確認から洗体(グスル)まで|親族に求められる決断と精神力】
- 【モスクでの葬儀礼拝|シンプルで短い祈り】
- 【イスラムの埋葬は大仕事|若い男性の力が必要】
- 【イスラムのお墓はどうやって用意するのか】
- 【共同体で故人を見送る|人の力で成り立つイスラムの葬送】
- 【死はアッラーの決定|残された人たちが受け入れること】
- 【イスラム教徒の葬儀に参列する時|非イスラム教徒が知っておきたいマナー】
- 【最後に】
【イスラム教の死生観】
今回の記事内に書かれている儀式や流れの全体の意味を理解するためにまず知っておきたい大きなポイントが、「イスラム教の死生観」です。

イスラムの訓えでは、「人の生死はあらかじめ神によって定められている」という考え方があります。そして、死について「死は終わりではなくアッラーのもとへ帰る」「来世へ向かう通過点」ととらえているため、「最後の審判の日に復活するまでの過程」にすぎません。現世は「来世のための試験期間」で、現世での善行の積み上げから審判を受けて来世(天国もしくは地獄)の道が決まります。
また、「人は土から生まれ、土へ帰る」という考え方、そして審判の日に復活をして来世を過ごすために物体としての体が必要なため、土葬での埋葬を行います。
このようなイスラム教の死生観についての知識を頭の片隅に留めていただいたうえで、ここからは実際にマレーシアでイスラム教徒が亡くなった際の葬儀の流れなどについて解説をしていきましょう。
【マレーシアのイスラム葬送とは】
まずは「葬送」という大枠でご説明します。
マレーシアでイスラム教徒が亡くなった際の葬儀や埋葬は、イスラム教の教義に基づき、非常に迅速かつ簡素に行われます。日本のように亡くなってから葬儀業者などを介して数日かけて準備をする葬儀とは大きく異なり、亡くなってから埋葬までほぼ24時間以内で完了することがほとんど。
(※要人などで国をあげての大きな葬送となる場合、もう少し時間を要することもあります。)
私は日本で生まれ育っているので、当然ながら日本のスタイルの「訃報→お通夜→葬儀→火葬」という流れを多く経験しているため、最初の頃はこちらでの葬儀の早さに驚いたりもしたものです。日本の場合は信仰によるしきたりの違いもあり、納骨まで含めるとかなりな時間を要することが多いですよね。
イスラム教の場合は、日本の多くの方が経験する「納骨」にあたるものが「埋葬」になるのでしょうが、その埋葬までもが24時間以内で終了します。
このスピーディーさの背景には、冒頭で簡単にご説明をしたイスラム教の死生観、そしてイスラム教ならではの共同体による支え合いの文化も大きく影響しています。
【とにかく早い|亡くなってから埋葬までの流れ】
イスラム教徒が亡くなった場合、その死亡理由や場所などの状況によって多少の変動はありますが、概ね以下のような流れで埋葬まで進みます。
- 死亡→医師による死亡診断が行われる
- ご遺体をすぐに家族やモスクなどの関係者に引き渡す
- 「グスル」と呼ばれるご遺体の洗体を行う(モスクや病院など、条件の整った場所で)
- モスクで「サラートル ジャナーザ」と呼ばれる葬儀の礼拝を行う
- 礼拝後すぐに墓地に運び、土葬による埋葬を行う
- (埋葬後は近隣の故人関係者宅で参列者への食事がふるまわれることも多い。すぐに帰る必要がなければできる限りいただき、短時間で退室の流れ)
この一連の流れの大きな特徴は「時間の早さ」です。
遺体を長くこの世に留めるべきではないとされる訓えに沿って、亡くなるとすぐに医師による死亡確認が行われた後は以下のスケジュールで埋葬まで行われます。
・午後や夜に亡くなった場合 → 翌日の昼には埋葬まで終了
このスケジュール感はあくまで目安になりますが、私が知る限りでの埋葬まで最も早かったケースは、「昼過ぎに急逝→その日の21時に葬儀礼拝→22時過ぎに埋葬まで終了」というものもありました。
なお、この間の、「病院→自宅」や「自宅→モスク」「モスク→墓地」などのご遺体の移動は、「Van Jenazah」と呼ばれるご遺体を搬送するバンやマレーシアでよく走っている救急車「Ambulance Car」で搬送されることが多いです。

Van Jenazahが足りていないなどの事情もあり、手配できない場合はAmbulance Carで搬送することもあるのですが、時折SNSなどでマレーシアの事情に薄い外国人の方が、「マレーシアでは救急車がしょっちゅう走っている。そんなに事故や病気で運ばれる人が多いの?」と書いているのを目にするのですが、実はイスラム教のこのような事情からご遺体を運ぶ頻度が高い、かつ迅速さも求められるゆえに目にする頻度が高い、ということは知っておくと良いかもしれません。
【死亡確認から洗体(グスル)まで|親族に求められる決断と精神力】
先述の埋葬までの流れで記載した「2」と「3」。
亡くなった場所がどのような場所なのかにもよるのですが、いずれにしても医師による死亡診断は必要ですので医師もしくは医療機関による介入は必要です。確認が終わり、自宅に運べるようならご遺体を速やかに移送しますが、遠方などの場合はそのまま近隣のモスクに運ぶ場合もあります。
亡くなった場所によっては移送の時間を考えると親族との最後の時間が取れないケースもありますが、イスラムの「速やかに土に帰す」ことが最優先になるため、親族は時にはつらい決断をせざるをえないこともあるのが現実です。
時間はあまりないなかですが、その間に葬儀を行うモスクや埋葬墓地などを関係者で決定し、モスクや関係者に連絡を入れて連携を図ります。
速やかに自宅やモスクに運ばれた後、ご遺体は親族や弔問客たちに囲まれてクルアーンを暗唱しながら弔いとお別れの時間を過ごし、「グスル」と呼ばれる洗体を行います。故人の体を水などで清める宗教儀礼ですが、その手順や方法などイスラム教のかなり細かな決まりがあります。
病院やモスク、スラウ(礼拝所)には「Bilik Pengurusan Jenazah」(遺体安置・処置室)と呼ばれる部屋があり、亡くなった病院にその設備があればできますし、難しければモスクのBilik Pengurusan Jenazahをお借りして行います。
洗体は基本的には同性の家族や(夫婦の場合は配偶者も行える)グスルの経験のある同性のイスラム教徒(基本的には家族や親族から)が担当しますが、ご遺体を動かしたり持ち上げたりという動作もあるためそれなりの重労働でもあります。腕力が必要になることはもちろんですが、家族を亡くしてすぐの親族にとっては必要と分かっている宗教儀礼であっても精神力も必要だと感じます。
私の夫が近い親族を亡くした際にこの洗体を行いましたが、終わってその部屋から出てきた際には目は真っ赤で疲労を隠せない顔で。いろいろこみ上げるものを堪えながらも同じイスラム教徒としての責務を全うしたのだろうと推察でき、見ているこちらも非常につらくなったほどです。
洗体後はご遺体を一切装飾のない白い布で包み、納棺します。地位のある人もそうではない人も、誰もが神様の下では等しく同じ形で神のもとへ帰るという考え方から、装飾をせず、そして比較的簡素な棺に納められます。
【モスクでの葬儀礼拝|シンプルで短い祈り】
そして、先述の埋葬までの流れで記載した「4」の葬儀の礼拝。
ご遺体が納棺されたら、その後速やかにモスクにて「サラートル ジャナーザ」と呼ばれる葬儀の礼拝が行われます。
ご遺体を前にイマーム(礼拝の先導者)が先導する短い礼拝で男性のみが行ないますが、女性は近い親族であれば礼拝に任意で同席できます。礼拝に参加しない子供や女性は後ろで遠巻きに座って眺めていて構いません。

モスク見学の際などにイスラム教徒の礼拝を目にしたことがある方もいらっしゃるでしょうが、よく目にする、立ったり座ったりする動作や床にひれ伏すようなあの通常の礼拝とは異なり、全員が立ったまま故人の赦しと安らぎを祈ります。全体でも5分ほどと非常に簡素ですが、大切な葬送の儀式です。
【イスラムの埋葬は大仕事|若い男性の力が必要】
礼拝が終わるとすぐに墓地へ移動し、「5」の埋葬が行われます。
土葬ですので当然ながら大きな穴が必要になります。これは基本的に人力で掘られ、モスクや墓地に連絡が入った後から担当するその地域の男性たちが埋葬に間に合うように穴を掘ります。
都市部の一部では時間短縮を目的にショベルカーを使用することも増えているそうですが、それでもまだまだ大多数が人力とのこと。実際私が参列した際の土葬はすべて鍬やスコップを使用しての人力作業で、暑いマレーシアで大変な重労働だと感じましたし、それに従事する男性たちには感謝の念に堪えません。

埋葬の際は顔が聖地メッカの方向を向くようにして穴の中に安置されます。穴が深いため、最初は力のある若い男性親族たちが一気に土を入れていきます。

ある程度埋まったところで参列者たちが少しずつ土をかけながら山にし、最後にお水をかけるなどを皆で行います。

埋葬後はその場でイマームによる最後の祈りが行われ、すべてが終わったら故人を一人にするために、なるべく速やかに墓地を離れることが良いと言われています。親族たちの心境としては離れがたいのではないかと感じますが、すべては故人が最後の審判の日に復活するまでの過程をよりスムーズに行えると信じての行動です。

土葬での埋葬の場に立ちあうたびに感じることは、とにかく地域の若く腕力のある男性たちの協力が欠かせないということ。埋葬以外の礼拝や棺の運搬など一連の流れのなかでも、イスラムの葬儀での男性の役割は非常に大きいです。
夫が以前言っていたことがとても印象に残っていて。
「田舎だと、大学くらいから都会に出てそのまま就職や結婚をして田舎に戻らない男性も一定数いて、そこに残っているままの同級生を時に揶揄する人もいる。でもこういう時、埋葬はスピードがとにかく大事。もし自分の親や親族の埋葬に間に合わない時は、田舎に残っている男性たちに協力をしてもらうことになるし、彼らがいなかったら遠くに暮らす自分だけでは葬儀も埋葬できない。こうやって田舎や地元に根を張って生きていく人も必要だし、人は助け合って生きている。」
埋葬や葬儀で助け合う人たちを見るたび、自分にもいつか必ず訪れる死について考えさせられます。自分自身が何歳で、そしてどこで息絶えるのかは分かりませんが、生きている時に人として、そしてイスラム教徒としてできることをすることで、またそれが善行となって自分の死後の審判にもつながっていくのかなとぼんやり感じながら埋葬の時間を過ごすことが多いです。
【イスラムのお墓はどうやって用意するのか】
埋葬の話題まで終わりましたので、ここでマレーシアのイスラム教徒のお墓についても少し触れてみます。
イスラム教徒の墓地の多くは「Wakaf」(ワクフ)と呼ばれる、イスラム教の寄付および信託制度寄付によって成り立っていて、公共のための土地として管理されています。

このWakafによって一度墓地として定められた土地の売買はできず、近隣モスクや地域によって管理維持されます。その地域に暮らす人が亡くなった際に墓地として使用できるため、たとえば深夜などにお亡くなりになった場合でも速やかにモスク担当者に連絡をして墓地を確保し、墓穴を掘る作業も開始できます。
日本ではお墓が用意できなくて納骨ができないという事情もよく耳にしますが、マレーシアのイスラム教徒の場合は土葬のみという事情にプラスして迅速な埋葬が教義になっていることもあり、墓地がないという事態はめったに起こりません。仮に何かしらの問題があって埋葬場所について迷走をする事態になったとしても、「故人を埋葬することは社会全体の責任」という考え方から救済策が講じられることがほとんどとのことです。
ただし、どこの国も同じでしょうがマレーシアでも都会は墓地にするための土地が不足しているという問題はあるようです。
ちなみに、お墓の話題に付随して墓石についても少し。先述では盛り土になった状態で埋葬は終了しましたが、特に期限や決まりなどはないものの、後日に墓石が設置されます。こちらも華美な装飾などは行わず比較的シンプルな墓石で、故人の氏名、生年月日と死亡年月日、そして父親や家族の氏名を記載するのが一般的なスタイルです。
【共同体で故人を見送る|人の力で成り立つイスラムの葬送】
ここまでの内容を読んできて、多くの日本人の方はおそらく「葬儀業者とかに依頼はしないの?」という疑問を抱いたのではないでしょうか。
日本では地域にもよるでしょうが、近年では基本的には人が亡くなったら葬儀の規模に関わらず、すぐに葬儀業者を手配してご遺体の洗体や安置の時点から業者にお願いをするのが一般的です。少なくとも、私自身が日本に在住していた45年以上の時間では業者をお願いしていない葬儀に参列をしたことはありませんでしたし、数年前に私の実父が他界した際も迷わず葬儀業者の手配を行いました。
一方でマレーシアのイスラム教徒の葬儀は、先述してきたように基本的に親族や親戚、そして地域やモスクのコミュニティによる人力を駆使してすべてを執り行うのが一般的です。
もちろん棺や墓石は業者から購入をしますし、Van JenazahやAmbulance Carの手配、弔問に来てくれた方へふるまうお食事などはデリバリーを依頼するなど一部費用をかけて専門の業者を頼ることはありますが、いわゆる葬送のメインとなる一連の儀式ではほぼ共同体の人力に頼って進められているのが特徴です。
(※要人など国をあげての大きな葬送でスタッフを多く要する場合は、例外もあります。)
ご遺体を運ぶ、洗体、墓穴を掘る、土を戻すといった作業の多くが体力と人数が必要になります。そのため、親族や親戚、友人や職場の方たちなどはもちろんのこと、地域の特に力のある男性たちやモスクのコミュニティから自然と人が集まり、役割を分担しながら進めます。
先ほど夫が関わった洗体(グスル)の経験談を記したように、それは時に親族の心境としてつらいシーンもあるのではないかと感じますが、同じイスラム教徒として、そして同じ時間をともに生きた人として「共同体で故人を見送る」という責任を果たす空気がいつも強く伝わってきます。
それまで故人やその家族を全く知らなかった葬儀業者の方が何人もそこに同席している葬儀の場とは違う空気がそこにあることは事実です。単なる労働力ではなく、親しい人たちが協力しながらその時間を過ごすことは故人への一番の弔いになるのかもしれない、といつも感じています。
【死はアッラーの決定|残された人たちが受け入れること】
イスラム教の葬送が非常にスピーディーということをお伝えしてきましたが、実際のところ遺族や友人知人たちは故人の死をどのように受け止めるのでしょうか。
冒頭でもお伝えしていますが、イスラムの訓えでは人の生死はあらかじめ神によって定められていて、死についても「死は終わりではなく来世へ向かう通過点」と捉えています。
とは言え、感情のある人間ですから大切な人が目の前からいなくなってしまったらやはり悲しいですよね。高齢や長く療養をしていたなどで周囲に心の準備ができていれば少しは穏やかにいられるかもしれませんが、事故や急病でお亡くなりになってしまった場合は遺族の気持ちがついていかず、すぐに事実を受け入れることはできないでしょう。
アッラーの決定と頭では分かっていても、悲しみは隠せず、葬送の一連の儀式のどこを見ても涙を流したり別れを惜しんだりする人たちを当然目にします。ただ、イスラムの葬儀では大きな声で泣き叫ぶなどして落胆を表に出すことは、アッラーの決定と運命に不満を示すこととして避けるように言われていますので、親族は静かに涙を見せながらも故人がアッラーのもとへ帰ることを受け入れる努力をしています。その葛藤は見ているととても伝わってきますし、人間らしい行動とも感じています。
24時間で迅速に行われる埋葬後ですが、当日は近い親族などはそのまま故人の家などに留まってともに礼拝を行うことが多いです。埋葬までは泣いて悲しんでいた親族たちがその礼拝後は笑顔で食事を囲んだりもして日常に戻るスピードも早いと感じています。もちろん個々の性格や亡くなられた理由によっても感情の違いはあるでしょうが、死に対して非常に前向きな考え方をしていることが伝わってきます。
これは信仰を問わず日本でもそうだと思いますが、大切な人の死であればあるほど「また会える」という感情が出てくるのかなと、私自身もこれまでに大切な人を見送った経験から感じています。また会える日を楽しみにいつもの生活に戻っていくことが残された人たちにできることでもあるのでしょう。

なお、埋葬以降の日本の初七日や四十九日法要のような決まったものはありませんが、男女ともに一定期間喪に服す期間があったり、家族や親族が集まってお墓参りや一定期間祈りを続けることは多いです。


【イスラム教徒の葬儀に参列する時|非イスラム教徒が知っておきたいマナー】
読者の方のなかにはイスラム教徒の友達や知り合いなどがいて、時に訃報に接することもあるのではないでしょうか。
非イスラム教徒の立場でどこまでイスラムの葬送に関わっていいのかも含めて、マナーなどを知っておくと後悔がなくお見送りができると感じますので、時折ご質問をいただく内容を記します。
▶一連の葬儀への参列について
葬儀への参列自体は以下の点への配慮を行えば、ご親族からも歓迎されます。
- 自宅への弔問は、葬儀の礼拝や埋葬の前後どちらでも問題ありません。葬儀前はご遺体を前にご家族によるクルアーンの暗唱などがありますが、同じ空間にいて見守っていれば問題ありません。
- 埋葬後のご自宅弔問の際は食事がふるまわれますので、遠慮せずいただきましょう。
- モスク敷地には入れますが、男女とも下記の服装規程を守りましょう。
女性:手首・足首まで隠れるスタイル/スカーフで髪と胸元や首などの肌を隠す
- モスク建物内の礼拝所には入れませんが、ご家族が中に招いてくれた場合は可能な限り服装規程を守り、靴を脱いで入る。(靴下はOK)
- 葬儀の礼拝や埋葬などのイスラム教の宗教儀式時は遠くから静かに見守る。
▶葬儀参列およびご自宅弔問の服装マナー
準備が間に合う場合は、先述のモスク敷地に入る際の服装規定に沿ったスタイルに着替えてから訪問がベストですが、時間がない!という場合もあるかと。そんな場合にたまに聞かれる質問が以下です。
・服装のNGカラーはある?
要人の葬儀の際は別ですが、一般の方の葬儀では黒などに限定する決まりはありません。さすがに原色カラーを着ている人は少ない傾向ですが(決してゼロではないのがマレーシア)、わりとカラーもいろいろ着ている方が多いです。とは言え日本人はどうしても黒やダークカラーが落ち着くでしょうから(笑)、おとなしめのカラーを選択しておけばいいでしょう。
・カジュアルなシャツやジーンズで大丈夫?
正装で訪れることができれば故人に敬意を示せますが、一方で埋葬の際に説明したとおりイスラム教の葬儀は汗をかくシーンも多いですし、一部の男性たちは土まみれになるのが現実で、男性たちはそれを見越して写真のとおり最初からカジュアルなスタイルで参列することも多いです。


大切なのは故人を見送る気持ちです。急な知らせで服装が間に合わなくても、実際の葬儀の場にはカジュアルなスタイルの人たちが多いことも知っておくと訪問のハードルが下がっていいでしょう。
▶お香典や供花の習慣は?
イスラム教では供花や香典の習慣はありませんが、非イスラム教徒が以下のように弔意を表すことは問題ありません。
- 弔問の際にポチ袋などに入れたお金を弔意の言葉とともにそっとお渡しすることはある。受け取るか否かはご遺族次第なので受け取りを辞退されたら無理にお渡しせずに持ち帰りましょう。
- 金額に決まりはなく、よく見かけるお年玉袋にお渡ししたい額を入れれば問題ありません。(柄やカラーなどもNGはない)
- 弔意の言葉は故人との関係性によっても変わりますし、決まりはありません。イスラム教徒同士ではアラビア語での決まった言い回しがありますが、それ以外でのタブーや決まりはないので伝えたい言葉で問題ありません。
【最後に】
今回は、私がマレーシアのイスラムコミュニティに身を置く中で実際に経験してきた、イスラムの葬儀全般についてご紹介しました。
短時間かつ故人への祈りと敬意に集中するそのスタイルは、日本の葬儀とは大きく異なります。しかしその背景には、「人は神のもとへ帰る存在」という明確なイスラムの死生観と、誰かの最期を皆で支えるという強い共同体のつながりがあります。
初めて触れると戸惑うこともあるイスラムの葬送スタイルかもしれませんが、その意味や考え方を知ることで、一つの文化として理解しながら見ることができるようになるのではないでしょうか。
もし身近なイスラム教徒の方の訃報に触れることがあったとき、今回ご紹介した内容が少しでも落ち着いて行動するための助けになれば幸いです。